ジブリ映画『風立ちぬ』に登場するドイツ人、カストルプの正体がスパイなのではないか、という推論について考察します!
謎の多いカストルプは、セリフもかなり謎です。
セリフで繰り返す「忘れる」や「破裂」の意味についても考察しました!
それでは早速見ていきましょう♪
カストルプの正体はスパイ?
カストルプの正体はスパイなのか?
風立ちぬの草もしゃおじさんことカストルプが食べてたのはクレソンマシマシのクレソンサラダですね。
決して観葉植物をもしゃもしゃ食べてたわけではありません。 pic.twitter.com/YgckCUYPGW— 火猪離(ひちょり) (@hicyori02) April 12, 2019
カストルプの登場シーンはそれほど多くありませんが、あまりに謎が多いので、
カストルプの正体はスパイ
である説が濃厚とされています。
スパイと言われているのには根拠が2つあります。それは、
- カストルプがタバコについて嘘をついている
- 次郎がカストルプに出会ってから特高に追われる
ということです。
根拠①カストルプのタバコ
カストルプは恐らくスパイ。実在のスパイ、ゾルゲがモデルと思われる。国際情勢に詳しく、ドイツの煙草が切れたと言いつつ後日同じ煙草を吸っている事からも支給を受けている事がわかる。彼と接触した事で二郎は特高に追われる #風立ちぬ pic.twitter.com/4zWlfbaNxt
— TAKUMI™ (@takumitoxin) February 20, 2015
まず、ドイツ人として描かれているカストルプは、次郎とタバコをふかしながら話しているシーンで、
ドイツのタバコ、これ最後、悲しい
と言います。しかし、後日、カストルプと次郎、菜穂子の父親の3人がテーブルを囲んで話すシーンでは、同じパッケージのタバコを吸っているのです。これは、
どこか特定のルートから物資の供給を受けている
と考えられます。
軽井沢滞在中に、ドイツへ買いにいけませんからね(^^; 滞在中にどこからか仕入れたと思われます。
根拠②次郎が特高に追われる
特高(とっこう)は「特別高等警察」の略です。社会運動や言論・思想取り締まりのために1911年から1945年まで組織されていた警察機構です。二郎はカストルプと接触したために特高に目をつけられたと思われます。#風立ちぬ pic.twitter.com/eVpQQUNFu6
— キャッスル (@castle_gtm) April 12, 2019
軽井沢で休暇を過ごし、仕事に復帰するや否や、次郎は上司の黒川から、自分が特高(日本の秘密警察みたいなもの)に追われていることを知らされます。
そしてやむなく、姿をくらますために自分の家には戻らず黒川の家に匿ってもらうことになりました。
何も身に覚えがないと話す次郎ですが、黒川によると黒川の友人も何人も「特高にやられた」とのこと。一見、特高が理由なく多くの人を逮捕しているように聞こえる説明ですが…
仮にカストルプがスパイで、次郎がスパイと交流を深めていたとしたら、
その事実を特高が知ったら、次郎を追いかけるのは当然のこと
です。
次郎は日本の戦闘機を設計するという、ある意味重要な情報を握っていますし、カストルプも次郎が飛行機の設計者でドイツのユンカース社に見学に行ったことすら、見抜いていました。
2人の間で特に重要な情報のやり取りがあったようには描かれていなかったので、次郎はたまたまスパイのカストルプの仲良くなってしまっただけなのでしょうが、カストルプがスパイだと考えると、次郎が特高に追われることには納得ですね。
モデルは実在のソ連のスパイ「リヒャルト・ゾルゲ」?
風立ちぬの軽井沢でカストルプさんがDas gibt’t nur einmalを歌を歌うシーンが好きです。 pic.twitter.com/j6YbHtV6a2
— 綾瀬 (@ayase_masu) April 12, 2019
ドイツ人カストルプというキャラクターのモデルが、実在したソ連のスパイ、リヒャルト・ゾルゲではないか、という考察も存在します。
というのも、
リヒャルト・ゾルゲはドイツ人に成りすまして、
ドイツと日本の対ソ参戦の可能性に関する諜報活動を実施していた
人物だからです。
最後は特高や検察によって逮捕され、戦争が終わる前の1944年に巣鴨拘置所で死刑が執行されています。
第二次世界大戦中の日本は、ドイツとは同盟関係ですが、ソ連とは敵対する関係にありましたから、カストルプが実はドイツ人のふりをして潜入していたソ連の諜報員だとも、十分に考えられるわけです。
カストルプのセリフ(忘れる、破裂)の意味
#風立ちぬ
謎のドイツ人、カストルプさん。
「日本人、満州国作った、忘れる、このままだと日本、破裂する」
モデルがゾルゲさん説がありますが、こういうドイツ人多かったんじゃないでしょうか。現に日本の特高はドイツ敗戦後も残存ゲシュタポと組んでドイツ思想犯を逮捕しまくりでした。 pic.twitter.com/qA7sKMDcb8— ねこたまみずき (@nekotamamizuki) January 9, 2021
カストルプのセリフ
カストルプが次郎に話したセリフが印象的ですよね。
「忘れるに、いいところです。
チャイナと戦争してる、忘れる。
満州国作った、忘れる。
国際連盟抜けた、忘れる。
世界を敵にする、忘れる。
日本破裂する。ドイツも破裂する。」
このシーン、カストルプのぎらぎらする目を見て、とても”ぞわぞわ”した気持ちになったのを覚えています。
カストルプは、様々な国の諜報活動を通して、日本とドイツが第二次世界大戦に突入して破滅することを予期していました。そして、暗に日本やドイツが都合の良いことは忘れることを非難していたのです。
カストルプのセリフの意味は悪魔のささやき
さらに深読みすると、戦争に用いられる飛行機、戦闘機を設計する次郎に対する問かけ、とも取れますね。
自分が設計する戦闘機が戦争に使用され、日本は破滅する。
でも、そんな都合の悪いことは忘れて、菜穂子との恋愛に夢中になれ
という悪魔のささやきとも取れるメッセージなのです。
ある種の批難的な言葉なのですが、それを聞いた次郎は厳しい表情はするものの、「ドイツはまた戦争するのですか」とどこか他人事の発言です。
ちなみに、イタリア人の飛行機設計士カプローニも、夢の中で次郎に「美しい飛行機を作れ」と囁きますね。
驚くべきことに、次郎は、周囲で起きている異変や破滅への道のりを無視して、2人の「悪魔のささやき」の通り、美しい戦闘機を完成させます。
そして、菜穂子との恋愛にものめりこみます。ただ、ずっとそばにいてあげるということはせず、仕事にばかり夢中になるのです。
次郎は果たして、良い人だったのか?と疑問に思ってしまうエンディングなんですよね。他のジブリ作品では感じられない、複雑な気持ちにさせる作品です。
「破滅」ではなく「破裂」の意味
カストルプはセリフの中で、「破滅」ではなく「破裂」と言いますよね。
言い間違いなんだろうと考えられますが、これは勝手な考察ですが、
- より「不気味さ」を印象付け
- より爆発的なエネルギーのある終わり方
を制作陣が意味づけしているように思われます。
セリフそのものがすでに不気味なのですが、言い間違っている方が印象に残りますし、不気味さが増しますよね。
そして、「破裂」は「破滅」よりもエネルギー量が大きいと思うのです。もっと勢いのある終わり方。それこそ、復興には長期間かかる取り返しのできない終わり方をすることを示唆していると思えてなりません。日本の第二次世界大戦後を想像すると明らかですね。
ちなみに、英語字幕でも「blow up」とちゃんと「破裂」の意味に訳されています。この破裂には意味があることがわかります。
まとめ
ジブリ映画『風立ちぬ』に登場するドイツ人カストルプとそのセリフについて考察してきました。結論、
- カストルプの正体はスパイである可能性が高い
- 「忘れる」セリフの意味は、次郎に対する「忘れろ」という悪魔のささやき
- 「破裂」セリフの意味は、取り返しのつかない終わり方をする戦争への示唆
ということが考えられましたね。
『風立ちぬ』は大人向けとあって、考察がかなり深くできます。何度も観て、いろいろ考えてみたいですね!