【徹底考察】『ゲド戦記』のクモの正体とは？映画と原作の違いを解説

2025年3月7日

スタジオジブリの映画『ゲド戦記』に登場する謎めいたキャラクター、クモ。その中性的な外見と不気味な存在感は、多くの視聴者に強烈な印象を与えました。しかし、映画ではクモの過去や正体について詳しく語られていません。本記事では、映画版と原作小説の違いを踏まえながら、クモというキャラクターの本質に迫ります。

ジブリ映画『ゲド戦記』を観ると、原作小説の『ゲド戦記』も気になりますね!映画内では描き切れていない深い世界観を堪能できますよ!

原作には実はファンが多いんです!

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この記事の監修者

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結婚・出産後も年間100本は必ず鑑賞中。
Filmarksアカウントにも鑑賞レビューを掲載中。

クモの正体とは？映画と原作の違いから考察

クモとは何者なのでしょうか？その正体を明らかにするために、まず映画版と原作小説におけるクモの役割の違いを整理します。

映画版『ゲド戦記』のクモ

映画版においてクモは、中性的な外見をした敵役の魔法使いです。彼は生と死の境界を越え、不老不死を得ようとしています。そのためにテルー（テハヌー）を狙い、世界の均衡を乱そうとします。

特徴：

性別不明の外見（長い髪、白塗りの顔、妖艶な雰囲気）
不老不死を求める魔法使い
ハイタカ（ゲド）と因縁がある
テルー（テハヌー）を執拗に狙う

クモは、恐怖や欲望の象徴として描かれています。死を恐れながらも、死を超えようとするその姿は、人間の根源的な欲望を表しているのです。

原作小説『ゲド戦記』のクモ

一方、原作小説『ゲド戦記』シリーズには、映画版のクモに直接対応するキャラクターは登場しません。しかし、最も近い存在として『帰還（The Farthest Shore）』に登場する魔法使いコブラがいます。

特徴：

かつて強力な魔法使いだったが、禁断の力に手を出した
死者の世界（死の門）の力を利用し、永遠の命を求める
ハイタカに敗れ、最期は無に帰す

コブラは、死の領域に踏み込み、均衡を崩したことで、最終的にハイタカによってその野望を打ち砕かれます。映画版のクモは、このコブラの要素を取り入れて作られたキャラクターだと考えられます。

クモの中性的な外見とその意味

映画版のクモは、非常に中性的なデザインが特徴的です。これは単なるデザイン上の選択ではなく、キャラクターの本質を象徴する要素でもあります。

1. 性別を超越した存在

クモの外見や声は、男性とも女性とも取れる曖昧なものです。これは、クモが「人間を超えた存在」であることを表していると考えられます。彼（彼女）は生と死の境界を越えようとしており、性別という枠組みをも超越しているのです。

2. 観客の想像力を刺激する

中性的なキャラクターは、観客によってさまざまな解釈ができます。クモの魅力や恐怖は、こうした曖昧さから生まれています。

3. 人間の欲望の象徴

クモは「死を恐れ、永遠の命を求める」という強い欲望を持っています。中性的なデザインにすることで、彼（彼女）が特定の個人ではなく、より普遍的な「人間の欲望」の象徴として機能するようになっています。

クモとハイタカの因縁とは？

映画版では、クモはハイタカ（ゲド）に対して「再会を喜ぼうぞ」と語りかけます。このセリフからも、両者の間に過去の因縁があることが伺えます。

原作での関係

原作『帰還』に登場するコブラは、かつてハイタカによって「死の門」を超える力を封じられた存在です。これは、映画版でクモがハイタカを敵視する理由と共通しています。

クモ（コブラ）の感情：

恐怖 – ハイタカに敗れた経験があるため、彼を恐れている。
憎しみ – 自らの野望を阻まれたことに対する怒り。
執着 – なおも永遠の命を求め、テルーを利用しようとする。

この関係は単なる善悪の対立ではなく、「死を受け入れる者」と「死を拒絶する者」という対比として描かれています。

クモの最期：映画と原作の違い

映画版『ゲド戦記』では、クモは最終的にテルー（竜の化身）によって焼かれて消滅します。最後まで「命をくれ！」と執着する姿は、彼（彼女）の本質を象徴しています。

一方、原作『帰還』におけるコブラの最期は、より静かなものです。ハイタカによって魔法の力を封じられたコブラは、「死の門」に吸い込まれ、ただ無に帰していきます。

この違いは、映画版と原作のテーマの違いを反映しています。

映画版：「死への執着と滅び」を強調（人間の欲望の愚かさ）
原作：「均衡の回復」を描写（哲学的な死生観）