映画「パラサイト半地下の家族」で、キム一家の息子ギウが、お金持ち一家の息子ダソンの誕生日会に招かれた際、映画冒頭で友人からもらった山水景石(水石)を一緒に持って行ったのはなぜなのでしょうか。
さらに、ギウはその石をお金持ち一家の家の地下室に持って行きます。
なぜわざわざギウは、誕生日会、そして地下室にこの石を持って行ったのでしょうか。
いろんな意味がありそうです!考察してみました。
①息子ギウが石を持って行ったのは地下の夫婦殺害のため?
息子ギウが石を誕生日会、そして地下室に持って行った理由として一番考えやすい可能性としては、
地下室にいる夫婦(元家政婦とその夫)を殺害するため
です。
息子ギウは、わざわざ重い石をリュックに詰めて誕生日会に行き、両手で抱えて地下室に持って行くのですから、
- 石を持って行ったことには何らかの意味があるはず
ですよね。
そして、息子が石を地下室に持って行った後、元家政婦の夫に襲われ、持って行った石で頭を殴られてしまいます。石がそのように使われたことから想起するのは、息子ギウも、そのようにして地下室にいる夫婦を殺害しようとしたのではないか、ということです。
しかし、キム一家がお金持ちパク一家がキャンプで出かけている間の酒盛り中で、父ギテクが息子ギウと次のような会話をしています。
父「(自分たちのせいで辞めさせられた)この家の運転手だったやつは、どっか他で仕事を見つけて働いているよな?」
息子「きっとそうですよ」
父「もっといい社長の家で」
自分のせいで辞めさせてしまった人のことを気遣っているような会話です。
つまり、このキム一家はとても冷酷で手段を問わず金持ちになろうとしている人たちではないように描かれています。
地下室にいる夫婦は、自分たち半地下に住む人たちよりもさらに階級が低い人たちと思われますが、そういう人たちを殺してまで、自分たちが犯した犯罪の隠ぺい工作をしようとは考えにくいですよね。
②地下の夫婦に幸せをお裾分けするため?
この山水景石は、そもそも息子ギウの友人ミニョクがギウに渡しているのですが、手渡すときの説明として、
「特にこの石は、財運と合格運を…」
と話しています。
父ギテクが途中で口をはさんでしまうので、ミニョクが言い切っていないのが意味深ですが、つまりは、財運と合格運を高める石として、キム一家に渡したのです。
息子ギウは、この石を誕生日会、そして地下室に持って行き、
あなたたちも幸せになってください、地下から出てください、という意味合いで譲り渡そうとしていたのではないか
とも考えられます。息子ギウの表面的な意図としては、幸せをお裾分けするために持って行ったと考えるのが自然でしょう。
しかし、映画として、その石が象徴的に意味するものは、また別にあるように思います。それについては次の項目です。
③事の発端である石を押し付けたかった?
そもそも、この石がキム一家にやってきてから、様々なことが起こってきています。石は全ての事の発端なのです。
このことから、ある意味、石は疫病神としても捉えられます。石自体が何を象徴しているのか、様々な議論がありますが、
- 階層社会の底辺の人たちが社会で味わう理不尽さ、しわ寄せ
- 格差社会の下から上に上がろうとしようとしても上がれない”重し”
のように思われました。
ギウの友人ミニョクから石を受け取る映画冒頭のシーンで、父ギテクと息子ギウは、石についてこのように言っています。
息子「これは本当に象徴的だな」
父「今の俺たちにぴったりだ」
なんとも切ないですが、父と息子は、この石を見て、自分たちの状態を象徴するものだ、と確信するのです。
さらに、大洪水のあと、一家は体育館に避難しますが、息子ギウは大変なときになぜかその重い石を持って避難し、抱えて寝ています。その理由について、父に聞かれ、息子ギウは、
「僕に、へばり付くんです」
と答えています。すっかり自分にへばり付いてしまったこの石を、息子ギウは、意図してか、意図せずしてか、地下室の夫婦に押し付けようとしたのかもしれません。息子は、
表面的には幸せのお裾分けでも、
無意識的には、疫病神で成功への足かせとなる石を押し付けようとした
と考えると、おもしろいですよね。
まとめ
「パラサイト半地下の家族」で、息子ギウがギソンの誕生日会と地下室に石を持って行った理由について、考察してきました。結果、
- 地下室の夫婦を殺害するため
- 地下室の夫婦に幸せをお裾分けするため
- 全ての事の発端である石を地下室の夫婦に押し付けるため
という3つが考えられました。映画は見た人の感じ方によって異なりますから、そのほかにもたくさん考えられると思います。
象徴的な意味が込められた映画を見ると、考察するのが楽しいですね♪