細田守監督のアニメ映画『バケモノの子』に登場する一郎彦は、闇に囚われてしまいましたが、その闇の正体とはいったい何だったのでしょうか?
また、一郎彦は女性なのでは?という声もちらほら聞こえますよね!確かに女性っぽいんです…。
その後どうなったのかも小説版などから考察していますので、確認していきましょう!
一郎彦の闇の正体は何?
一郎彦の闇……怖いけど、誰にでもあるものなのかもしれませんね・・・私を含めて。でもそれでもその抱えた闇に飲み込まれちゃいけないんだって、思うしかないですね😖 #一郎彦 #心の闇 #宮野真守 #マモ #バケモノの子 #バケモノの子が深い #闇に飲み込まれてはいけない pic.twitter.com/WKGzkq25Rn
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一郎彦の闇の正体は何だったのか、結論から申し上げると、
アイデンティティの混乱から来る嫉妬と羨望
と考えられます。順に掘り下げて考察しいきましょう。
人間であるという出自
一郎彦の重大な秘密が一郎彦が抱えた闇に大きく関係してきます。それは、
一郎彦が人間である
ということ。人間の闇については、映画の中で
- 人間はひ弱が故に胸の奥に闇を宿らせる
- 闇につけ込まれて手に負えなくなることがある
という説明がされていますね。
つまり、一郎彦は人間であったために闇を抱え、その闇に飲み込まれ手に負えなくなってしまったというわけです。
一郎彦が人間であるという点は、一郎彦が既に熊徹を刀で刺すという大事件を起こした後で、猪王山が経緯を宗子に説明しているシーンでした。
猪王山か人間界に出向いたときに、路地裏で捨てられないている赤ん坊を見つけ、バケモノ界に連れて帰ったのです。
猪王山は、
「皆に隠して密かに育てると決めた。人間が闇を宿すとは知っていたが自分が育てれば大丈夫だと考えた。」
と考えて、その子に「一郎彦」と名付け、こっそり自分の長男として育てることにしました。
しかし、人間であることを本人にも周囲にも隠していたがために、どんどん辻褄が合わなくなってきます。
真実を話さない父親と受け入れない本人
一郎彦は成長するに連れて、自分の見た目に疑問を持ち始めます。
「どうして私は父上のように牙が生えないのですか?」
「どうして私の鼻は父上のように長く伸びないのですか?」
「父上・・・私は一体・・・」
こういった疑問に対し、父親である猪王山からは、「お前は俺の息子だ」くらいのことしか返ってこず、特に何の説明もないのです。
一郎彦は自分のアイデンティティについて相当混乱したと想像します。
父(猪王山)のようになると思っていたのにならず悔しいし悲しいし、結果的に
自分は何者なのか、自分には何が欠けているのか
などなど悩み苦しんだと思います。
これって実は、結構人間界では「あるある」だと思いませんか?
子どもはまず親をモデリングします。親をモデルにして同一視し、こうなりたい!と願うわけです。もちろんそうならないケースも多々ありますが。
医者の息子を想像するとわかりやすいですね。
親の期待、周囲の期待、自分も当然そうなると思って自分自身に期待しますが、一向に親のようにはなれない、としたら……
柔軟な人は、「自分と親とは別人だからしょうがないよね!自分には親とは違うこんなに良いところがあるし!」と思えることもあると思いますが、一郎彦はそもそも「父のようになる」前提で、猪王山もそれを否定せず、一郎彦には偽りの事実を信じ込ませたのです。
父親として、人間であることはすぐには言えなかったとしても、「お前にはこんな良いところがある。角がないこと、鼻が長くないことなんて気にするな」くらい言えたらまだよかったのかもしれません。
蓮と自分の比較
一郎彦の闇は、決して出自や猪王山との関係のみから出来上がったものではありません。
最後に追い討ちをかけるように、人間「蓮(久太)」が現れます。
蓮を一郎彦の弟がいじめているとき、一郎彦は蓮をかばいますが、そのとき「ひ弱な人間」と、人間を見下して助けていますよね、つまり慈悲です。
バケモノこそ人間より優れていると考える一郎彦にとって、
- 蓮がメキメキと強くなっていく過程はおもしろくないし
- 蓮と一郎彦は、バケモノに育てられたバケモノの子なのに、
蓮は熊徹といつも一緒で、一郎彦は忙しい猪王山とはなかなか一緒にいることができない
といったことは、蓮に対する嫉妬と羨望を育てるのに十分だったのでしょう。
一郎彦が人間だという事実を自分なりに受け入れられていたら、蓮と一緒に努力することもできたかもしれませんが、その事実が隠されていたことが事態を複雑にしてしまいました。
一郎彦にとって辛い事実を受け入れてしまうと潰れてしまうから、
他者に対する嫉妬や羨望として負のエネルギー(闇)として外に出すしかなかった
のでしょう。ある意味、自己防衛ですね。
一郎彦の性別は女性というオチもあり?
バケモノの子・キャラ紹介④〔少年期・一郎彦〕声:黒木華
【親ゆずりの強さと品格を持つ】
― 一郎彦について ―
黒木「一郎彦は子どもらしい正義感を持つ前向きな子です。そのキラキラした部分を大切に表現したいと思いました」※パンフより pic.twitter.com/fI8tUcttDV— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) July 22, 2016
一郎彦が登場した当初から、声が女性っぽいと思いませんでしたか?
私はてっきり、これは最後に一郎彦は実は女性だったというオチが来るのではないかと予想していましたが、
一郎彦は男性でした!
でも、子供の頃の声が女性っぽかったですよね?声優を調べてみると、幼少期の一郎彦は女優の黒木華さんが務めていました。
なるほど、と納得できますね。
でもこのご時世、中性的なキャラクターや、LGBTQに関するキャラクターが登場することに違和感ありませんよね。
男性、女性、という二択にカテゴライズされない一郎彦も、もし続編を作るならアリなのでは?と考えます。
【考察】一郎彦のその後
青年になった一郎彦さんを演じたのは宮野真守さん❤️マモさん、素敵な声ですーー😆💗「バケモノの子」テレビ初放送中⭐️ #一郎彦 #バケモノ #親子の絆 #九太 #バケモノ #マモ #宮野真守 pic.twitter.com/Ba26ocStuq
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一郎彦は最後に、一晩中寄り添ったバケモノの家族がベッドで寝てしまっているところで目を覚まし、手首に赤い紐が結び付けられているのに気づきましたね。
もともとは蓮が楓からもらったものを、「自分を律することができるように」と一郎彦に渡したのでした。
一郎彦の最後のシーンはここまでです。その後が気になりますが、実は、細田守監督自身が書いた小説版に、一郎彦のその後が描かれています。
ほんの少しですが、内容としては、
- 一郎彦は人間なので本来なら人間界に返すべきだが、
蓮の活躍により、人間を拒絶するルールが成り立たなくなった - 宗子と元老院が話し合った結果、一郎彦は猪王山の息子としてやり直せることになった
- 猪王山は一郎彦を立派な大人に育て上げることで、責任を果たすことを誓った
というようなことです。
一郎彦は人間とわかりましたが、バケモノの世界で、もう一度バケモノの子として再出発することになったのですね。どんな心境でしょうか…。
今度こそは、人間であるありのままの自分を受け入れて、自信を持って前に進んでほしいですね。
自分のコンプレックスを隠すためであっただろう、あの猪のかわいらしい帽子を取る日がきっと来ると思います。そのときには、人間界にも顔を出して、蓮ともいい仲間になっているといいな…と思います。
唯一バケモノに育てられた人間の境遇がわかる相手ですからね♪
まとめ
『バケモノの子』の一郎彦の闇の正体と、女性説、その後など、一郎彦にまつわる様々な謎を調べてきました。結論としては、
- 一郎彦の闇は、アイデンティティの混乱からくる嫉妬と羨望
- 人間の蓮が活躍したことが、一郎彦の嫉妬心をさらに強めた
- 女性のように見えたが実は男性
- その後は、小説によると猪王山の息子としてやり直した
ということがわかりました。考察の仕方にはいろいろあると思いますので、何度も観たいなと思います♪